2007年12月29日土曜日

農家の一戸当たり経営面積(国際比較グラフ)……百聞は一見にしかず


今朝の日経新聞からスキャン:




これじゃどうしようもないことが分かるだろう。ニッポンの農業問題は「土地問題」なのである。農業を家族内で継承していくことを前提とした日本の農業政策は、改正民法化の日本では、必然的に農地の細分化と「田分け」を生み、生産性を著しく低下させ、その結果生じた膨大な過大農業就業者を食わせるためだけで、日本経済は疲弊してしまった(悪名高い農業補助金ばかりではなく関税・非関税保護障壁のおかげで消費者が払わされる余分な費用は天文学な金額となっている)。衰退に陥った日本経済にとって、農地売買の自由化と農業への新規参入規制の撤廃は喫緊の課題である。

Posted: Sat - December 29, 2007 at 11:46 AM   Letter from Yochomachi   農業問題  Previous   Next   Comments (8)

2007年12月21日金曜日

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「ニッポンでは政治が”家業”となっていることが問題」(宮内義彦)



今度の08年度予算財務省原案。あまりのバラマキぶりに目を覆いたくなった。政治家は選挙で勝つことしか考えていない。今度の予算はそのための「買収工作」というわけだ。政治の高い志はどこに行ったのだろう。折しも宮内氏がいいことを云って居られる。NBOnline から:
「格差を認め流動性の高い社会に」 (サブプライム後の世界経済) : "リーダーに聞く:宮内義彦 オリックス会長グループCEO"

抜粋:
  1. 日本は少子高齢化が世界で最も速いスピードで進んでいますから、放っておくと成長が鈍化するのは当たり前の話。日本は世界の中でも最も成長に関心を寄せなければいけない国なのです。それが今は全く成長の話はせずに、反対に格差問題に代表されるような、分配の議論ばかりをやり始めたわけです。これは全く間違っていると思います。
  2. まず体を大きくすべき。それをせずに、分け前の話だけをしても仕方がない。体を思いっきり大きくして、足りないところに分けていく。これが政治なんです。今の政治は増税と分配の話しかしません。こんなばかな話はありません。むしろ法人税や個人所得税は減税すべき。最近では経済界も法人税減税については言わなくなってしまいました。
  3. 格差問題で留意すべきは、格差そのものが悪いのではなく、格差を固定する社会がいけないということです。格差を固定しないためには、流動性の高い社会を作ることが必要です。
  4. しかし日本の社会は流動性を高めようという動きとは全く反対です。公務員制度一つ動かない。農業分野にしても、農地は息子にしか渡しちゃだめ。都会の人が農業に挑戦したいと思っても難しいというのが現状です。政治家も親が政治家でないとなれない。
  5. (なぜ改革は進まないのでしょう。)誰もが自分の既得権益の中で安楽に生きようとしているからです。そもそも政治家の身分が固定化しているのが一番よくない。政治家は今度の選挙に勝てるかどうかしか考えていません。それは政治が家業になっているからです。政治が家業になっている国など、例外はありますが、ほとんどありません。政治が固定化して流動性がないのは、日本の最も深刻な病です。
  6. 海外では、誰も日本のことなんて考えていません。存在感がなくなっています。今の日本は音もなく落ちている感じです。情けないです。

ニッポンはどんどん世界から置いてきぼりを食っている。日本株は見放され、極端な低迷を続けている。成長力を失った日本経済も今度は韓国にも負けるだろう。みんなが貧乏になればいくら都市住民から収奪しようにも、その原資が無くなってしまうことがどうしてイナカモンには分からないのだろう。

Posted: Fri - December 21, 2007 at 05:01 PM   Letter from Yochomachi   名言(迷言)集   Previous   Next   Comments (2)

2007年12月12日水曜日

「税収地方移転で問題は解決しない、貴重な富の空費である」(慶應義塾大学、前川燿男教授)



今朝の日経「経済教室」。こういう当たり前の理屈が通らないニッポンという国は、ホンマに落ち目。

抜粋:
  1. 大都市の法人事業税の一部を地方自治体に移転することが確実になったが、不思議なことに、なんのために移転するかは議論されていない。
  2. 移転という意味では、三大都市圏だけで国税の六割強を負担しており、それが地方交付税という形で、大都市から地方への巨額の税が移転されている。
  3. 東京都の場合一人あたりの地方税収は確かに全国一だが、国税分を加えた実質的な租税配分額は22位、都民負担への還元率は0.3で最下位である(要は都民は払った税金の三割しか還元されていない)。
  4. 大都市圏の集積を生かさなければ日本の発展はない。国際的な都市間競争はますます激烈になっている。
  5. 日本は「ばらまきの制度化」という事態に陥っている。現行制度下では自治体が税収増に努力しても地方交付税が減少するだけで、逆に努力しなくても一定の財政水準が維持される。いわば働き者が損をする結果となっている。
  6. 首都圏では道路・港湾などの都市インフラがいまだに整備途上であり、直下型地震が来れば112兆円もの被害が出る。美しい都市景観は都市の国際競争力に直結するが、現状は遙かに遠い。
  7. 全国一律・フルセットの制度を廃止しなければならないが、現実の動きは逆である。政府は法人事業税の移転により税収増となる自治体について地方交付税が減らぬように特別枠を設ける方針だという。ただ驚くばかりである。これは世界に通用しない。

日本政府の愚行には、ただただ驚くばかりである。一個人としてやれることは、とても少ない。負担増に備え支出を抑えるか、日本の将来に見切りを付けて日本株を売ることぐらいしかない。支出の削減(低価格品志向)は国内生産者に打撃を与え、証券市場の停滞は若い世代が将来受け取る年金を一段と低いレベルに抑えることになるだろう。かくしてニッポンはますます貧乏になって行くのである。

2007年12月11日火曜日

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日経「大機小機」:再分配大国ニッポン



今日の大機小機の眠り独楽子はいいことを書いて居られる。

抜粋:
  1. 財政再建をすすめるには三点セットが必要。経済成長、歳出削減、増税。
  2. 福田内閣になってからこの三点セットのすべてで方向感が見えなくなった。
  3. 成長力を高めるには法人実効税率の引き下げ、労働市場での規制緩和、医療や農業への企業参入の本格解禁などが必要だが、改革の流れは止まってしまった。
  4. 歳出の削減どころか、バラマキのオンパレード。余剰米の買い上げ、地方の道路整備への補助引き上げ、教員の増員要求も。
  5. 背景にはこの数年の格差論議とそれに乗った民主党の躍進がある。
  6. 再分配をもっと必要なほど日本は公正さを欠く国なのかといえばそうではない。社会保障制度などによる再分配を考慮したジニ計数は2005年に0.39で、三十年前から0.04しか上がっていない。諸外国と比べても格差は小さく、しかも安定している。
  7. ワーキングプア問題は生活保護などのセイフティーネットの問題だ。これを格差問題と位置づけたため、都市から地方へなどという再分配の声が高まった。
  8. 再分配大国ニッポンの財政再建は遠のいた。

こんなニッポンの心中するのはまっぴらとばかり、ニッポンの投資家の日本離れが著しい。日経センターの株式討論会では「もう日本株を売ろうという人は売ってしまったはず」など戯言を言っていた人がいたが、ところがどっこいそうではない。散人みたいに春と夏に売り損なって、今から売る機会をうかがっている人はまだまだとても多いと思う。おまけに売る理由が今になって出てきている新しい理由だ。証券優遇税制の小手先だけの「継続」は、むしろ逆効果だろう。

「カブ、カブあがれ、あがったら売るぞ」

Posted: Tue - December 11, 2007 at 02:18 PM   Letter from Yochomachi   Money   Previous   Next  Comments

2007年12月9日日曜日

「味は同じなので、産地表示などはどうでもいいと思った」(船場吉兆取締役)




但馬産と偽って九州あたりの牛肉を使っていた船場吉兆の責任者の弁。あはは、これは大名言だな。

今朝の日経「中外時評」で読んだが、百貨店の生鮮食品売り場では一尾7500円のサバが売られているという。「関サバ」と言うらしい。豊後水道で獲れたサバのことを指すが、同じ豊後水道のサバでも対岸の宇和島で水揚げされると「関サバ」とはならないので普通の値段で売られていると聞いた。全くアホらしいことである。

吉兆は腐っても鯛。食材の善し悪しぐらいは判断が付く。そのプロがニッポンのブランド農産物と普通の食材との間に品質の差はないと証言したのである。これは非常に重要。今はやりの粗製濫造「ブランド」はもとより、伝統的なブランドと言えど、実際は名ばかりなのである。

消費者にブランド信仰を植えつけ、その上でブランドを乱出させ(国産農産物は猫も杓子も「ブランド」指向なのですべての国産品は程度の差こそあれ「ブランド」らしい)、結局消費者から高いお金をぶったくろうとする農水省の企みが破綻することにも繋がりかねない大事件なので、彼ら農村利権集団はカンカンになって怒っている。いい気味だ。

消費者はもっと賢くなろう。悪徳農村利権集団にボラれるのはやめよう。

Posted: Sun - December 9, 2007 at 07:29 PM   Letter from Yochomachi   名言(迷言)集   Previous   Next   Comments (10)

2007年11月30日金曜日

「『海の色が変わった』と昔と同じような胸騒ぎを覚える」(田淵節也)



野村證券元会長の田淵節也氏は89年のバブルがはじける直前に「海の色が変わった」と発言し話題となった。日経新聞に今日まで「私の履歴書」を連載されてきたが(これ抜群に面白かったが、それはさておき)最終日の今日のコラムで、「その時感じたのと同じような胸騒ぎを覚える」と書かれている。

抜粋:
  1. 「アメッポン」と言われる日本は米国に振り回されてきた国だ。その米国が今また、大きく変わる節目にあるような気がしてならない。
  2. 来年の大統領選挙で民主党が勝てば、イラク戦争の厭戦気分が一団と高まり、中東情勢は混沌とするのではないか。
  3. 軍事力に陰りが出れば、ペーパーマネーのドルの信認が低下し、米国は金や原油、穀物などの実物資産を裏付けとする新しい通貨制度を考え出すのではないかと思う。
  4. そうなれば、金本位制が「ドル紙幣本位制」に変わって以来の大変化だ。世界中が混乱し、アメッポンの日本は一番大きな影響を受ける。すでに、政界はざわついてきた。
  5. 僕は安倍さんが総理になったとき、「蒸留水しか飲んだことがない人は持たないのではないか」と思った。
  6. 小沢一郎さんが天下を取るのか、小泉純一郎さんが再登場するのかは分からない。いずれにせよ、日本の政治も大揺れするのではないか。
  7. 高度成長期以来、ぬるま湯につかってきた日本は、久しぶりに大激動の時代を迎えるように思う。
  8. 僕は日本の将来を悲観も楽観もしていない。「職人国家」としてそれなりの世界でのステータスを保っていけると思うから心配していない。
  9. もっとも、軍事力も持たずに「金融大国」の幻想を抱いている人は幻滅するかも知れないが……。
  10. 改めて人生観を自問すれば「人間は太古の昔から同じことを繰り返している動物」と言うことだ。
  11. 人生は思った通りにはならない。だから人生は面白いのであり、結果的にハッピーなのではないか。
  12. 「人間三代でチャラ」とはよくいったもので、いいことばかりは続かないし、悪いことばかりも続かない。それもまた人生の面白いところだ。
  13. 人間は変わらないが、世の中は変わる。これが実感であり、不変の真実なのだと思う。
  14. ブラジルの港町サントスの海岸で、沈む夕日を背に、奴隷の子孫の黒人が跪き、先祖の故郷アフリカに向かってお祈りする姿に、ただ感動した(ことがある)。心に焼き付いて離れない光景だ(った)。

なんか最後は「2001年宇宙の旅」の不思議な映像を思い出すようで、実に見事だ。この「私の履歴書」を読まれていない人がいるなら、図書館でコピーしてでも読むべきだと思う。日本の戦後経済史そのものなのである。今や歴史となった時代の局面局面での整理の仕方が実に良い。また田淵節也氏の人柄のすばらしさがまともに伝わってくる文章がいい。

さて、この最終回での総括をどう読むか。投資戦略にどう活用するか、である。散人なりの戦略:
  1. 日本株は、グローバルでかつ業界断トツ企業を残して売る。
  2. ドル資産は、ポートフォリオの20%以内に。同じ比率以上のドル以外の外貨資産(ADRなどの外貨連動資産でも可)を持つこと。円比率は半分程度に。
  3. 債券比率を大幅に増やす。世界REIT(もしくは人口増加地域での実物収益不動産投資)を増やす。
  4. 新興国株式投資はまんべんなくやっておくこと。どこが伸びるか分からない。当然資源国は忘れずに。
  5. 金は収益を生まないからやらない。もしドルが金に連動するようになるなら、ドルを持っていても同じこと。

まあ、台風対策として大きくは間違っていないと思う。問題は実行力だな。今年に入って三度も、決めていたのに日本株を売る機会を逃してしまったから。

2007年11月21日水曜日

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荷風は釣りが好きだった!


3/17 Today 永井荷風、放水路の風景を発見 (1936)




「国内の旅行は徒に不当なる通行税と申すものを政府に献上致すためのやうに存ぜられ、それが無念に候」



持田叙子「おうちを、楽しく」(三田文学)……目からウロコの荷風論




日経:荷風を通じて時代の最先端が見える!



荷風塾 No11: "荷風と月 ー『断腸亭日乗』の驚くべき正確さー
"


荷風塾 No10: "荷風が浅草で最後に飯を食った店はどこか?"


荷風塾 No9: "荷風と山鳩"



荷風塾No8: "荷風はどうして時代が読めたのか"


荷風塾 No1 〜 7 menu


荷風塾「荷風が愛した(?)南高橋」




荷風塾:荷風はうなぎが好きだったのか?


Kafu 荷風塾学校通信 No12 荷風と散歩


日経:晩年の荷風と小林青年(川本三郎)


荷風関連文献リスト、荷風経済年表ダウンロード


Kafu School News No16 「小説作法」


Kafu 学校通信 No20 荷風と「教養主義」


『永井荷風の生涯』(小門勝二)……小門勝二が嫌いな人もこれを読めば考えが変わるかも


荷風関連文献リスト、荷風経済年表(2004.9.4更新)


永井荷風の終焉の家の今、門だけは当時のまま


Kafu School News No15『濹東綺譚』生原稿3000万円入札不調


Kafu School News No19 荷風と関東大震災


荷風塾学校通信 No.22 荷風についてのエントリーINDEX (11/12 月)


永井久光『父荷風』上梓なる!……これは大ニュース

荷風、漱石、三島由紀夫の微妙な関係……新説ですぞ!


「荷風のこだわり」(東理夫)


サイデンステッカーが一番愛した日本の作家、永井荷風


荷風塾:なんと「荷風!」という雑誌(にちぶんMOOK)が発売されている!


荷風関連文献 / Google で Excel File の検索とDLが可能!


Kafu School News No18 荷風と高見順


Kafu 荷風塾学校通信 No14 荷風と神戸




「珊瑚集私註」




















2007年11月19日月曜日

日経:中国の一人あたり豚肉消費量は日本の二倍



今朝の日経。ニッポンイストが「飢え死に寸前」と喧伝する中国大衆の栄養状況は意外と良いらしい。もう少し調べたくて現代アジア研究所の資料を見るとこんな研究レポートがあった:
主食・食肉の変化:日本・中国大陸・台湾 : "取得できた資料を2本掲載した。これでみると、1970年代末から、食生活は急速に改善されていることがわかる。また、80年代期には日本の摂取水準を凌駕し、3,000カロリー水準に到達しつつあることが知られる。ドル表示の1人当たりGNPは、88年、日本が20,120ドル、大陸中国は330ドル (ちなみに台湾は5,430ドル、いずれも1980年固定価格)で、大陸中国は日本の60分の1、台湾は11分の1である。その社会が1人当たりカロリー摂取量が日本より多いという状況になった。"

多ければいいというものでもないが、少なくていいというものではない。ニッポン政府は「メタボ、メタボ」を繰り返し、食べすぎないことが良いことだと宣伝しているが、自分たちが国民に十分に食い物を供給できないいいわけとして問題をすり替えているにすぎない。戦時中、宮沢賢治の詩「アメニモマケズ」のなかの「一日玄米4合と……」を「一日玄米2合と……」と書き換えた軍国政府と違わないではないか。

以前テレビで鎌倉武士の食生活が紹介されていたが、一日玄米5合にミソと野菜と魚。トータルで3000キロカロリーが優に超えていたと推定されると。それが鎌倉武士の強さの秘密。やはり十分に食べられない国民は元気が出ないのである。

最近、生活保護が受けられなくて餓死した人の話や、フリーターが一回の食事をそうめん一束(50グラム)に抑えて生活している例などを聞くと、現代日本はやはりおかしいと思う。生活の一番の基本である食料品の値段が余りにも高すぎるのである。その結果日本は先進国としては異常にエンゲル係数が高い。

理由は、言わなくてもお分かりになると思うが、ノーソン既得権集団が日本の食料品価格を恣意的に釣り上げているからに他ならない。

このままでは北京オリンピックばかりか経済戦争でも中国にボロ負けしそう。「腹が空いては戦は出来ない」のである。

2007年11月13日火曜日

「永い時を経て琵琶湖に適応して生息している生物は,皆かけがえのない存在です」(天皇陛下)



今回の天皇陛下のブルーギル発言を、大衆環境攘夷主義者に迎合するマスコミは「天皇陛下の自己批判」として大々的に報道しているが、先のエントリーで書いたようにこれは天皇陛下の真意を曲げて報道しているものだ。このエントリーのコメント欄で教えてもらったが、唯一京都新聞だけが「ご挨拶」での天皇陛下の違う趣旨の言葉を引用している。真実はどこにあるのか? 宮内庁のホームページで天皇陛下のご発言の全文を手に入れた。

これがそのご挨拶の全文である:
◇天皇陛下のおことば
第27回全国豊かな海づくり大会
平成19年11月11日(日)(滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール)

 第27回全国豊かな海づくり大会が,湖では初めて,ここ滋賀県大津市の琵琶湖畔において開催されることを,誠に喜ばしく思います。 
 琵琶湖は永い歴史と広大で多様な環境を有し,湖に固有の多くの生物を宿しています。これら固有の生物はそれぞれ琵琶湖の環境に適応し,幾つかの種類では近似種間で生態や生育水域を異にしてすんでいます。琵琶湖には3種のナマズがすんでいますが,その中の2種ビワコオオナマズとイワトコナマズは1961年に友田淑郎博士によって新種として記載されたものです。湖岸部を住処(すみか)とするナマズに対して,ビワコオオナマズは沖合で魚を追い掛けて生活し,イワトコナマズは岩礁地帯に生息して真横に突き出た目で小魚やエビを探して食べています。かつて池でナマズとビワコオオナマズを飼ったことがありましたが,浮き餌(え)の食べ方が両者で異なり,ナマズが上方のものを食べるのに適しているのに対し,ビワコオオナマズは前方のものを食べるのに適しているように思いました。これらの環境に適応した種類を見る時,生物進化の妙を深く感じます。
 この琵琶湖において,近年,集水域や湖畔での経済活動により水が汚染し,魚類の産卵繁殖場が減少するなど環境の悪化が進んできました。外来魚やカワウの異常繁殖などにより,琵琶湖の漁獲量は,大きく減ってきています。外来魚の中のブルーギルは50年近く前,私が米国より持ち帰り,水産庁の研究所に寄贈したものであり,当初,食用魚としての期待が大きく,養殖が開始されましたが,今,このような結果になったことに心を痛めています。
 昭和52年に,初めて大規模な淡水赤潮が発生したことを契機として,琵琶湖の環境保全のための真剣な取組が開始され,以来,産卵繁殖の場であるヨシの生い茂る地帯の造成や,湖岸の清掃,周辺の山々の植林など,多くの人々が協力して,最近は湖の環境は良くなってきていると聞きます。再び魚影豊かな湖となることを期待しています。
 永い時を経て琵琶湖に適応して生息している生物は,皆かけがえのない存在です。かつて琵琶湖にいたニッポンバラタナゴが絶滅してしまったようなことが二度と起こらないように,琵琶湖の生物を注意深く見守っていくことが大切と思います。
 この大会が河川,湖沼の生物を愛する心を培い,皆で豊かな湖(うみ)づくりに励む契機となることを願い,大会に寄せる言葉といたします。


http://www.kunaicho.go.jp/okotoba/okotoba-h19-01.html

まともな国語読解力がある人はじっくりと読んで欲しい。いろいろの利害関係者にご配慮された表現とはなっているが、天皇陛下の真意はあくまでも最後のパラグラフにある「永い時を経て琵琶湖に適応して生息している生物は,皆かけがえのない存在です。」という一言である。これはまるで疑問の余地はない。

つまり「ブラックバスであれ、ブルーギルであれ、わが国に永く適応して生き長らえた生物は、天皇陛下の臣民である。みんな虐めずに大切にして欲しい」という今風の「環境攘夷論者」を諫める天皇陛下の強烈なメッセージなのである。

天皇陛下は、今の日本国民が外国嫌い(ゼノフォビア)攘夷主義に陥っていることを危惧されているのだと思う。これはとても危険な風潮である。最近米国の社会学者が、米国の外来生物排斥運動と米国の好戦的な内向きゼノフォビア志向の間に有意の関係があると統計的に立証したが(ここ)、今のニッポンでは確実にその傾向がうかがえる。2chなどではアホらしいほど顕著だ。滋賀県知事ともあろう人が、2ch並みの頭脳構造の持ち主であることが情けない。

Posted: Tue - November 13, 2007 at 07:29 PM   Letter from Yochomachi   名言(迷言)集   Previous   Next   Comments (7)